忍者ブログ

なるにわ ぶろぐ

「なにものか」でなくともよい場所、なるにわのブログです。
なるにわの活動、づら研などについて
おもに、コーディネーターの山下耕平が書いてます。

© NPO法人フォロ

   
カテゴリー「多様な教育機会確保法案」の記事一覧

立法チーム条文ヒアリング-2(論点整理)

多様な教育機会確保法案について、8月18日の議員ヒアリングで論点となったことを整理しておきたい(メモが不十分で、議論の全体をカバーしきれていないことは、ご容赦いただきたい)。


◎理念法なのか特別措置法なのか?

共産党の田村智子議員から、「この法案は多様な教育についての理念法なのか、就学義務の特例を認める特別措置法なのか?」という質問があった。これに対し馳浩座長は「あくまで就学義務が前提であって、その特例を認めることだ」と応答した。中井敬三全国都道府県教育長協議会会長からも、基本理念に「学校教育法第一条に定める学校での普通教育を原則とするが」との文言を入れるべきだとの意見があり、馳座長も応じるかまえを見せていた。

これまで、馳座長は「この法案は、不登校のなかでも学校にほとんど来ない子どもたちの存在が立法事実で、学校外で学び育っている現状を追認するための法案だ」との説明をくり返してきた。しかし、法制度上は、あくまで一条校への就学義務を前提とせざるを得ない。「普通教育」の内容に多様性が認められ、それが理念的に保障される法案にはなっていない。そのため、ホームスクーリングやオルタナティブスクールなど、初めから就学義務を前提としない場合については、原則的には認められないものになっている。立法側の現行制度と不登校の現状との矛盾を何とか解消したいという意気込みはわかる。また、解釈で実をとるという面もあるとは思うが、これは法律の根本的な問題なので、運用面で変えていくことのできる問題ではない。これまで推進する側が言ってきたように「この法案で多様な教育が認められる」というほど、単純な話でないことは確かだ。


◎「二重学籍」は解消されるのか?

また、この法案の必要性の根拠に、「二重学籍」問題があげられていたが、この法案では「二重学籍」は解消されない。学校から教育委員会に籍が移るものの、フリースクールなどで独自に卒業資格が出せるわけではないからだ。認定するのは教育委員会となり、しかも修了書という卒業証書とは異なる形式での認定となる。


◎個別学習計画は現状追認?

この法案で、いちばんの問題になっているのは個別学習計画だが、これについても「基本的に現状を追認するもので、学習指導要領に沿うものを求めているわけではない」と、馳座長からはくり返し見解が示されている。しかし、法案では学校教育法第21条の目標を達成するよう定められている。そこに「発達段階及び特性に応じつつ」との文言が入ったのは、配慮の結果だと思うが、この点も、法の根本的な位置づけとしては、学校教育を補完する法としてしか位置づけられないのは確かだ。

学校復帰が前提であるがゆえに義務教育の届いてない児童生徒に対し、特別措置で現状を追認しながら教育機会を保障しようという立法者側の意図はわかる。しかし立法側の意図がどうあれ、実際に運用するのは教育行政だ。教育委員会からは、次のような疑問や要望があがっている(8月18日のヒアリング資料をもとに山下がまとめた)。
・実施にあたっての市区町村教育委員会の負担は相当なもので、財政的措置が具体化されないままでは、実施が危ぶまれる。
・修了認定は「学習状況を総合的に評価」とあるが、漠然としていては現場に混乱が生じる。修了認定の基準を明確に示されたい。

・フリースクール等での柔軟な活動が阻害されないよう過度に厳格な計画が求められないようにすることが必要だが、国が責任をもって個別学習計画の認定・認定取り消しの基準や手続きについて明確な指針を示すことが必要。

・フリースクールなどへの監督責任は誰が負うのか。株式会社立の通信制高校においては、教育活動の質の低さが問題となり、指導監督が不十分であることが問われている。

・これを商機と考える学習塾が「フリースクール」を掲げて営業を行った場合、実質的に学校教育の否定になりはしないか?

・フリースクールや家庭学習の場が、今法案で逆に「フリー」の部分を奪われることにつながるのではないか。
・学校とフリースクールが連携して指導・支援を進めている例も出てきているが、除籍によって教員に「もう我が校の生徒ではない」という意識が生まれると、そうした取り組みが阻害される可能性もある。


個別学習計画の策定や修了認定を厳格化するとフリースクールなどの活動を阻害することになる。しかし、何でもありとなると、営利目的の塾産業や質の低下なども懸念され、監督責任も問われる。明確な基準がなければ行政側の恣意的な運用が問題になることもあるだろう。
立法者側の意図が現状追認にあるからといって、事はそう単純ではない。


◎そのほか

以上のほか、不登校の場合だけではなく、学校でいじめで苦しんでいる子どもたちも対象にしてほしい(奥地)、教育に限定するのではなく福祉との連携が必要(西野)などの論点が出されていた(山下が出した意見については先に書いたので割愛)。

まだ書き漏らしている論点もあったかと思うが、とりいそぎ気づいた点をまとめた。
いずれにしても、立法チームは明日21日から条文のとりまとめ作業に入るという。今後の行方を注視したい。 (山下耕平)

立法チーム条文ヒアリング報告(自分の部分のみ)

昨日、「多様な教育機会確保法案」の立法チームのヒアリングに参加してきた。今回は、条文についてのヒアリングということだった。私以外は、中井敬三(全国都道府県教育長協議会会長)、志村修(千葉市教育委員会教育長)、奥地圭子(フリースクール全国ネットワーク代表理事)、西野博之(NPO法人フリースペースたまりば理事長)の各氏。
まず、政治情勢からいうと、21日の立法チーム会合から、条文のとりまとめ作業に入るとのことだった。ただ、現時点でも、立法チームのなかで意見にかなり相違があり、条文がまとまるのかどうかは、わからない状況もあるように感じた。
私が申し上げたのは、下記6点。

*  *  *


1.基本理念・目的について

 第一条に「児童の権利条約の趣旨にのっとり」と入ったこと、二条に「普通教育を充分に受けていない者の意志を尊重し」と入ったことなどは重要だ。


2.個別学習計画について

しかし、個別学習計画については懸念が大きい。立法チームに要望書も提出されているが、これまで幾人もの親御さんから、子どもが不登校になると、親は焦って勉強などで子どもを追い詰めてしまうこと、個別学習計画が親の不安を煽って子どもを追い詰める結果にならないか、自身の経験上の悔悟とともに懸念が示されている。


3.多様な教育機会として、家庭は外すべきではないか。

不登校の家庭で、地域で孤立している家庭は多い。子どもも親も学校を中心とした関係のなかで生きているため、不登校になると、子どもだけではなく、親も関係が断たれてしまう。その孤立状態が、さまざまな問題を引き起こしている。不登校の親の会や、フリースクールなどは、地域で孤立してしまった親子が、地域を越えた関係を回復することに役立ってきたと言えるが、文科省の調査では、フリースクールに通う児童生徒は4200人、不登校全体の3.5%に過ぎない。大半の不登校の家庭は孤立状態にあると言える。家庭が孤立している状況のなかで、自宅までを範囲として多様な学びを認めるということに、現状では無理がある。それが、個別学習計画への懸念に現れている。
長期欠席のなかには、家庭が孤立したまま、過酷な状況に置かれている子どもたちがいることを忘れてはならない。そして、過酷な状況の人ほど声をあげられずにいることを肝に銘じないといけない。

この法案が理念法で、現実を変えていく一歩とするのであれば、多様な教育機会から自宅は外すべきではないか。この法案の理念に逆行した現実を引き起こさないためにも、慎重に考えるべきだ。


4.相談体制について

第十一条に相談体制の整備とあるが、努力規定になっている。実際問題として、教育委員会が、個々の家庭をフォローアップすることは、実務的に可能なのか? 高校進学の調査票や健康診断など、学校が持っている機能を実務的にどこまで教育委員会ができるのか?

いまの学校が、あまりに抱え込みすぎてきたことは問題だ。学校復帰前提であるがゆえに、かえって手が届かず、関係の切れてしまっている家庭が多くあることも問題がある。教育を多様化する必要はあるが、充分な相談体制を欠いたまま、人的にも環境的にも厳しい状況にあるフリースクールや、ましてや家庭で抱え込むことになれば、それは危険と言わざるを得ない。


5.夜間中学校について

資料に、鳥居さんという方の資料を入れた。くわしく紹介している時間はないが、虐待を受け、親の自殺をみとるなど過酷な状況を生きてこられた20代の女性だ。鳥居さんは、義務教育を学び直したい、しかし形式卒業者であるため、これまでは無理だった、そして、いまの夜間中学校は、見学に行っても外国人の日本語習得のニーズが多くなっていて、自分のニーズとは合わないということを言っている。


6.二重学籍を問題視するより、すべての子どもに多層的な関わりを

この法案を必要とする背景のひとつに、二重学籍の問題があげられていた。しかし、実際上、教育委員会が修了認定をするのであれば、解消しているとは言えない。そうであれば、無理に学籍を選択にかける必要があるのか? この間、内閣府の調査で、子どもの自殺は9月1日が圧倒的に多いという結果が発表された。これは現場の実感にも沿うものだ。しかし、自殺の抑止という観点からも、籍を抜いて別の学び場へということは、渦中の当事者の耳には届きにくいのではないか。渦中の当事者に何より必要なのは、とにかく休むことだ。休む、その場から逃げる、距離を置くということと、選択肢として選ぶということには、開きがある。

二重学籍を問題にして選択肢を増やすよりも、どの子にとっても、学びや居場所が多層的にある制度設計が望ましいのではないか。そういう層のひとつとして、フリースクールを公共的に位置づけることもできるのではないか。しかし、それは条文への意見を超えてしまうので、以上にとどめる。

*  *  *

ほかの方からの意見、議員のやりとりなど、報告したいことはいろいろあるが(とくに教育委員会からの懸念については具体的なものがあった)、時間的・体力的余裕がないので、とりいそぎ自分の発言についてのみ、ご報告。
(山下耕平)

法案をめぐる動きについて

8月11日、議員連盟の総会で、多様な教育機会確保法案の条文案が公表された。
法案の正規名称は、「義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法律案」となっている。

条文案の全文は、不登校新聞社のサイトでも閲覧できる。
→不登校新聞Web版2015.08.11

もともとの予定では、11日の議連総会で条文案を可決し、国会に上程する見込みだったようだが、議員のなかでも意見がまとまっていないようで、条文案をもとに、さらに数回のヒアリングを開くことになったそうだ。18日に開かれるヒアリングには、私も呼んでいただいた。

9月9日には、東京・渋谷で「ますます不登校の子どもが追いつめられる!? 9・9『多様な教育機会確保法案』緊急大検討会」が開かれる。石川憲彦さん、石井小夜子さん、内田良子さん、桜井智恵子さん、私が話題提供。法案そのものの検討が主眼だが、教育をめぐる幅広い視野からの論議ができるのではないかと期待している。
→詳細は、こちらのサイトから。

いずれにしても、この法案をめぐる動きは、大詰めを迎えている。(山下耕平)


多様な教育機会対話フォーラムと、その後について

遅くなったが、7月26日の多様な教育機会対話フォーラムについて、簡単に報告しておきたい。このフォーラムは、多様な学び保障法を実現する会の総会の予定を大幅に変更して、懸念や慎重・反対の声も含めて、対話する場として設定されたものだった。
私も、これまで述べてきた懸念を提示したが、それはやみくもに対立することではなく、むしろ推進する人たちとこそ懸念を共有したいこと、そのうえで、推進する側は、懸念の声を受けて、現在、条文化作業が進められている法案に対して、ここは譲れないという原理原則を提示してもらいたい旨、冒頭に述べさせていただいた。
フォーラムに先立つ第1部では、奥地圭子、喜多明人、汐見稔幸(VTR)の各氏から基調講演・報告があった。とくに喜多氏は、これまでの懸念を受けて、具体的な論点を提示された(くわしくは下記に資料がアップされている)。

第2部は、吉田敦彦氏が進行されたが、ここでも最初に論点整理が示された(上記リンク参照)。ただ、参加者からの発言では、おもに下記の2点に意見が集中した。


1.個別学習計画と、その認定について。

推進・慎重・反対を問わず、この個別学習計画への懸念や批判は非常に多かった。懸念への応答としては、認定ではなく認証にできないか、事前審査ではなく事後評価にすべきではないか、額面通りに受けとらず上手にやったらいいなど、さまざまな意見があった。


2.親が子どもを追いつめてしまう懸念について。

 この法案がこのまま進んだ場合、焦っている親が、かえって子どもを追い詰めてしまう危険について、実際の経験を踏まえた懸念がいくつも語られた。立法者や推進者の意図を超えて、結果として、法案によって追い詰められる子どもが出てくる可能性は否定できない。こうした懸念に対しては、子どもの最善の利益や休息の権利など、子どもの権利条約の理念を法案に書き込む必要があるなどの意見もあった。


また、今回の議論で明確になったと思われるのは、多様な教育機会の確保と言いつつ、あくまで特例として就学義務の履行とみなすのであり、法案は学校教育法と並ぶものにはなり得ないという点だろう。この制度を使っての「卒業」が学校の卒業資格と同等の資格になるのか、学歴社会のなかで不利益が生じないのかなどの懸念も示された。


総じて、推進する立場の人たちの意見としては、現段階では不十分でも、理念法として法案を通し、運用面で関係者が主体性を発揮して、時間をかけていい制度にしていこう、というものだった。いまの制度のままでも、子どもたちは苦しんでいるのあり、その状況を変える一歩になれば、と。

その意気込みはわかる。しかし、私は冷静な観点が必要だろうと思う。文科省の調査によれば、フリースクールなどに通う児童生徒は4200人程度だ。それは不登校全体の3.5%に過ぎない。私たちの手の届く範囲は、ごく限られている。手の届かないところで、新しい制度によって苦しむ子どもがたくさん生み出されるのであれば、その責任を誰が負うのだろう。

義務教育民営化への懸念も消えない。この法案では、「多様な学び場」に、設置主体による線引きはないのだ。喜多氏も、バウチャーで親の選択に任せてしまうと、競争の激化を招き、営利性を増すことは明らかだと述べていた。そのため、機関委任の可能性も探るべきだという。


プラス面だけを強調して、懸念やマイナス面を軽く見るのでは、原発安全神話のようなことになりかねない。法案は、先週、立法チーム内で条文案が示され、国会提出に向けた議論に入ったそうだ。聴くところによると、座長試案がそのまま踏襲された条文案となっているという。これまで示された懸念などの声は反映されるのだろうか……。
推進する立場にある人たちも、出てきた条文案に対して、ここは守るべきという自分たちの原理原則をきちんと提示すべきだろう。 (山下耕平)

立法チーム関係者ヒアリングの報告(一部)

多様な教育機会確保法案について、昨日、立法チームの関係者ヒアリングがあり、私(山下)も発言時間をいただき、緊急集会のアピールをもとに懸念を伝えた。ヒアリングの発言者は、ほかに、奥地圭子(フリースクール全国ネットワーク/東京シューレ)、中村尊(クレイン・ハーバー)、前田賢一(全国夜間中学校研究会)の各氏(夜間中学校はもう1名いらしたのだが、手元のメモで不明のため割愛)。

ここでは、私の発言の概要と、関連すると思われる議員の発言概要のみを報告しておきたい。
(山下耕平)


●山下の発言概要

 岩手で中学生がいじめを苦にして自死したとの報道があった。彼の冥福を祈りながら、話したい。1986年2月、鹿川裕史くんが、「このままじゃ生きジゴクになっちゃうよ」という遺書をのこして自死するという事件があった。この30年、子どもにとって学校だけが世界というなかで、そこで死にまで追い詰められる事態が続いてきた。東京シューレも、ちょうど開設から30年とのことだが、この間、奥地圭子さんたちが粉骨砕身、尽力してこられたのは、私も間近で見てきたし、私自身、フリースクールの運営に関わるなかで、いかにフリースクールを運営するということが困難かは、身にしみている。国会の場で多様な教育機会の確保を論議していただいていることは、たいへんありがたい。また、この法案の基本理念・目的については、すばらしいと思う。

 しかし、一方では、不登校に関わるフリースクールや親の会など関係者のあいだからも、かなり強い懸念や危惧の声があがっている。いかに理念がよかったとしても、この法案のままでは、理念・目的に逆行したかたちで、子どもたちを苦しめてしまうものになるのではないかと、強く危惧している。それは、法案を通したあと運用面で考えることではなく、法案作成段階において、きちんと考えていただきたい。過日、大阪で緊急集会を開き、懸念についてのアピールをとりまとめた。簡潔に3点申し上げる。


1.義務教育民営化への懸念
 
 法案は、フリースクールと夜間中学校を支援対象としているが、教育バウチャーとなった場合、塾産業が参入してくることも想定される。この点が不明確であると、疑念も広がる。きちんと明言いただいた上で討議していただだきたい。義務教育が民営化されることは、「多様化」というプラス面だけではなく、マイナス面も大きいことが懸念される。文科省が2006年に出した報告では、教育バウチャーを導入した国々で、格差拡大や学校の序列化など、さまざまな問題が起きていることが指摘されている。義務教育を民営化した場合に何が起きうるのか、実例をもとに、じゅうぶんな検証が必要ではないか。


2.権利主体は誰にあるのか?

 法案は、保護者に学習の場の選択権をゆだねているが、子どもと保護者のニーズは必ずしも一致するとはかぎらない。むしろ不登校をめぐっては、保護者と子どものニーズが対立的であることのほうが多い。たとえば、子どもが学校に行きたくないというとき、子どものほうは、とにかく休みたいということが多い。ところが、親のほうは1日も早く、なんとかしたいと焦っている。ようやく学校を休んだと思ったら、保護者が「個別学習計画」を立てて、子どもに学習を迫るというのでは、子どもはかえって追いつめられてしまう。
 また、フリースクールの運営に関わっていて、活動に意義を感じる一方、限界も感じている。そのひとつは、任意契約であることだ。子どもがどんなに来たいと思っていても、親がウンと言わなければ、来てもらうことはできない。あるいは、子どもが通い続けたいと思っていても、親の意向で辞めさせられてしまうことも多々ある。
 私たちは、親とかわされる任意契約で活動することの矛盾を、イヤと言うほど痛感してきた。今回の法案が、フリースクールや夜間中学校を公共のものとして位置づけるものであればよいが、教育バウチャーとして、義務教育全体を民営化していくことになるのであれば、それは、こうした矛盾を拡大していくものになるのではないか?
 最初から、意識をもって学校とフリースクールを選択できるような家庭については、座長試案に示されているような方法は有効な面もあるだろう。しかし、そういう状況にはない家庭も多くある。立法側の意図だけではなく、現実に引き起こすであろう問題を、きちんと見極めることが必要だ。


3.不登校への「支援」となるのか?

 子どもたちが不登校となる背景に、子どもたちが教育評価的なまなざしでのみ自分のことを見られることに疲れきっている問題がある。不登校は、その視線からの撤退だとも言える。フリースクールなどの役割は、その撤退を保障するという面があって、いわば「居場所」としての機能を果たしてきた。多様な教育機会を保障するといっても、それが塾産業なども含め、より能力主義的、より成果主義的な方向を強めていくことになるのであれば、教育評価の視線が細分化することで、かえって子どもは逃げ場を失ってしまう。それは場合によっては、生死を問うような問題になってくると懸念している。


 フリースクールの卒業生でも、その後、苦しい状態を生きている若者は、数多くいる。それは、フリースクールに問題があるからということではなくて、問題が学校を超えているからだ。若者の雇用状況が非常に厳しいなか、必死にがんばり続け、つぶされている若者が多くいる。いま、大学で非常勤講師もしているが、大学生の多くも、ある意味では、同じように苦しんでいる。登校・不登校を超えて、能力主義・成果主義が子ども若者を追い詰めている。このまま、教育制度が、能力主義、成果主義を強めていく方向に行くのであれば、子ども・若者の未来はないと感じている。むしろ、そこから降りても大丈夫だというセーフティネットを築いていくこと。そういう構想のなかにこそ、フリースクールなどを位置づけていくことが必要ではないか。


学習会:多様な教育機会確保法案をめぐって

下記のとおり、多様な教育機会確保法案をめぐっての学習会を開きます。

日 時:7月18日(土)18:30~21:00

場 所:フォロ

参加費:500円


法案がどうなっていこうと、いまの教育をめぐる情勢がどういうものであって、今後、どう考えていく必要があるのか、考え合う機会が必要だと感じています。

※余裕のある方は、下記を読んできていただくと、話を深めやすいかと思います。このあたりをネタ本にして学習会をしたいと思ってます。

法案に賛成だとか反対だとかいうことではなくて、教育をめぐる情勢についての知見を共有して、意見交換ができればと願っています。(山下耕平)

多様な教育機会確保法案への意見を議員に

多様な教育機会確保法案について、いろんな意見がネット上でも飛び交っていますが、現在、議員連盟内で立法チームがつくられて、法案はそこで討議されています。フリースクール全国ネットワークは要請文を作成し、立法チームに渡していますが、それでは不足していると思う意見があれば、議員に直接、届けてはどうでしょう?
下記、立法チームの議員と、そのサイト(メールフォームなど)です。(山下耕平)

(自民)
萩生田光一 http://www.ko-1.jp/
水落敏栄 ※サイトは見当たらず

(公明)

(民主)

(維新)

(共産)

(社民)

多様な教育機会確保法案を考えるうえで

多様な教育機会確保法案は、今国会に上程すると言っているので、悠長なことを言っている暇はないのだが、それでも、目先の議論だけでは見えてこないものがあるように思う。

思いつくままに考え合いたい点をあげれば、ざっと下記のようなことだ。


・国が「教育の多様化」を言うようになった背景に何があるのか。

・海外での教育の民営化=市場化の実情について。

・雇用の流動化のなかでの、学校・教育の意味役割の変容。

・「近代家族」「家庭教育」の位置づけと、その変容etc...


つまり、いまの教育の置かれている状況そのものを考えないと、ちゃんと議論することができないように思うのだ。私自身、勉強不足なのだが、私の知るかぎりで、これはと思う書籍や資料をいくつか紹介しておきたい。

「多様な教育機会確保法案は危ない」桜井智恵子さんインタビュー
(不登校新聞社つぶやきプロジェクト2015年6月20日)



これに加えて、手前味噌で言えば、『迷子の時代を生き抜くために』(拙著/北大路書房2009年2月刊)も読んでいただけると、ありがたい。いまの状況にいたる構図を示すことはできているように思うので。

また、これは読んでおくといいという書籍や資料があれば、ぜひ教えていただきたい。
(山下耕平)

院内集会に参加してきましたが……

多様な教育機会確保法の院内集会に参加してきた。

率直に感想を述べれば、最初から「制定を目指す」と銘打たれてはいたものの、議事進行については、あんまりじゃないかと思った。議員が参加している集会中は、フロアからの発言はいっさい許されておらず、にもかかわらず主催者の用意していた「要請文」は全会一致で採択とされて、「議員のみなさん、よろしくお願いします」と締めくくられた。しかし、私が直接知るだけでも、懸念を持っているがゆえに参加している人も多くいた。
 
フリースクール側の発言としては、教育バウチャーへの懸念があること、個別学習計画の運用に懸念があることなどは、わずかに指摘されたものの(それでも指摘があったことは評価したいが)、全体としては賛成意見一辺倒で、早期に法案を可決して、懸念については運用面でクリアしたいという方向のみで話が進んだ。
   
国会議員からは、河村建夫会長のあいさつ、馳浩議員からの座長試案の説明のほかは、「みなさん、いっしょにがんばりましょう」というコメントが大半だった。

一方、事前に発言をしたいと申し入れていた人には、議員が退出したあと、文科省の職員が話を聴くということで、発言時間があった(また、数人はフロアからの発言時間もあった)。

私も、発言時間をいただいたので、大阪で緊急集会を開き、懸念の声も非常に大きかったことから、懸念についてアピールを出したことを簡単に報告し、その要点について、文科省への質問を含めて、おおむね下記の発言をした。

……………………………………………………………………………………………………

・今法案は、フリースクールと夜間中学校が前面に出ているが、塾産業などは想定されていないのか。

・義務教育民営化については、海外での先例の検証などを、省内でされているのか。

・法案は学習の場の選択権を保護者にゆだねているが、保護者と子どものニーズが一致していない場合をどう考えているのか。

・学校教育に対して自律性を持ったものが広がるのであればよいが、結果として、より成果主義的なまなざしが家庭に入っていくのであれば、ここに集まっている人の思いとは逆の結果を招いてしまう。

・そのほか、懸念はいろいろある。なぜ、そんなに焦っているのか。今国会への提出というが、拙速はやめてほしい。充分に論議を尽くしてほしい。

……………………………………………………………………………………………………

質問に対する文科省の担当官、亀田徹氏からの回答は、「議員立法なので文科省から回答できることにはかぎりがある」とのことで、実質的な回答はほとんど何もなく、「運用面で懸念をクリアしていきたい、懸念も含めていっしょに考えていきたい」という内容だった。

そうであれば、議員のいる場で懸念などの声も採りあげるべきではなかったか。時間にかぎりがあったとはいえ、まったく、議員との実質討議がなかったことについては残念というほかない。

終了後、いろんな人に声をかけていただいて意見交換したが、推進の立場にある人は、一様に「法案を通すチャンスは今しかない。懸念はわかるが運用面で考えたい」とおっしゃっていた。懸念の内容について聴いても、そこへの応答はほとんど聴かれなかった。しかし、運用面で考えられることと、法案として考えなければならないことは別だ。

第一、今回の院内集会においては、条文すら発表されていない。法制局が条文案を出してくるのは今月末になる見込みだという。それを、延期されるとはいえ、今国会中に成立させるというのだから、拙速というほかない。フリースクール関係者は座長試案のみを見て、あとは「議員のみなさん、よろしくお願いします」というのでは、あんまりだ。

法案作成段階において、懸念についても、きちんとした検証を踏まえて、論議を尽くす必要がある。

(山下耕平)

Profile

HN:
なるにわ
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
「なにものか」でなくともよい場所、なるにわ(NPO法人フォロが開いてます)。毎週土曜日の午後にサロンを開いているほか、づら研(生きづらさからの当事者研究会/月に1回)、終末ティータイム、冊子『もじにわ』刊行、なるにわラジオ配信などの活動をしています。ブログは、おもにコーディネーターの山下耕平が書いています。

Twitter

ブログ内検索

カレンダー

10 2017/11 12
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

最新コメント

[04/06 鳥居]
[02/08 みやすけ]
[01/13 山下耕平]
[01/13 M]
[11/21 山下耕平]

QR Code

携帯からもアクセスできます。

AD

PR
Copyright ©  -- なるにわ ぶろぐ --  All Rights Reserved
Design by CriCri  / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]