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カテゴリー「多様な教育機会確保法案」の記事一覧

緊急アピール:ちょっと待った! 多様な教育機会確保法案

6月11日に開催した緊急集会には、不登校の親の会、フリースクール、居場所、不登校経験者、保護者、教員、研究者など、さまざまな立場から28名の参加があった。賛否さまざまで、踏み込んだ話し合いが行なわれた。本アピールは、関係者のなかにも懸念や危惧の声も大きいことから、その部分についてアピールするものである。そのため、集会参加者の総意による採択ではなく、有志による採択とした。

※集会に寄せられたメッセージを、アピール文の後ろに、PDFにまとめている。

ちょっと待った! 多様な教育機会確保法案
緊急アピール
2015年6月11日
不登校・フリースクール等関係者有志

5月27日、超党派のフリースクール議員連盟が「多様な教育機会確保法案」の試案を示し、今国会中での成立を目指すと発表した。

法案の目的は「さまざまな事情で義務教育を充分に受けていない者(年齢、国籍に問わず)」に対して、教育機会を確保する施策を総合的に推進すること。試案では、保護者が学校以外で学ぶことを選んだ場合、「個別学習計画」を作成し教育委員会に申請し、教育支援委員会(新設)が審査・認定すれば、就学義務の履行と認め、保護者に経済的支援をするとしている。いわば、教育バウチャーである。

「年齢、国籍を問わず、教育機会を多様に確保する」という法案の趣旨に異論はない。これまでの画一化された学校教育が多様化する必要性もあるだろう。しかし、示された法案には、さまざまな懸念がある。拙速を避け、国会への提出より前に、以下の論点を含め、充分に論議を尽くすことを求める。

1.義務教育民営化への懸念

法案は、フリースクールと夜間中学校を支援対象としているが、教育バウチャーとなった場合、塾産業が参入してくることが考えられる。たとえば2004年の構造改革特区では、株式会社立の学校が相次いで設立された(ほとんどは広域通信制高校)。しかし一部の広域通信制高校では、教員ひとりに対する生徒数が多すぎる、レポート添削がマークシートのみ、事務体制の不備、管轄自治体が実態を把握していないことの問題などが、文科省の調査によって指摘されている。
 アメリカやイギリスにおいては、「教育改革」の名のもと、教育の民営化=商品化が進んだことで、格差拡大など、さまざまな問題が起きていることも指摘されている。教育領域の市場化が何をもたらすのか、きちんとした検証が必要だろう。


2.権利主体は誰にあるのか?

法案は、保護者に学習の場の選択権をゆだねている。しかし、子どもと保護者のニーズは必ずしも一致するとはかぎらない。保護者と子どものニーズが対立的である場合は想定されるべきだろう。子どもの意見表明権(国連子どもの権利条約12条)が充分に確保される必要がある。また、学校側からのニーズによって、保護者や子どもの意志に反して、学校から排除されるケースが生じないか、懸念される。


3.不登校への「支援」となるのか?

多くの子どもたちが不登校となる背景に、子どもたちが教育評価的なまなざしでのみ自分のことを見られることに疲弊しているという問題がある。不登校は、その視線からの撤退だとも言える。フリースクールなどの役割は、その撤退を保障するという面があり、いわば「居場所」としての機能を果たしてきた。

多様な教育機会を保障するといっても、それが成果主義になるのであれば、教育評価の視線が細分化することで、かえって子どもは逃げ場を失ってしまうだろう。

そのほか、さまざまな懸念が考えられるが、フリースクール等に関わる立場から、とりいそぎ、以上3点を懸念としてあげる。また、義務教育制度を大きく変えていくものになる以上、フリースクールや夜間中学校関係者だけではなく、学校教育関係者との論議も充分に尽くされる必要がある。拙速を避け、国会への提出より前に、じゅうぶんな論議を尽くすことを求める。


→アピールPDF版

→メッセージ1(親の会などから)

→メッセージ2(栗田隆子、住友剛、貴戸理恵)

→メッセージ3(中島浩籌、古山明男、岡崎勝)

緊急集会の呼びかけ

各位

ご存じのように、多様な教育機会保障法案が議員立法として国会に提出されようとしています。賛成の意見も多いことと思いますが、さまざまな懸念もあります。

16日(火)には、東京の衆議院会館で院内集会が予定されていますが、なかなか、東京には行けない方も多いことと思います。

そこで、緊急集会を呼びかけます。

11日(木)18時半~フォロにて。

意見がまとまるようであれば、緊急アピールを採択したいと思います。
急な話ではありますが、ぜひ、ご参加いただき、率直に話し合えればと思っています。
-- 
…………………………………
NPO法人フォロ
山下耕平
〒540-0036 大阪市中央区船越町1-5-1
TEL:06-6946-1507/FAX:06-6946-1577
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フリースクールの自律性は……

いま、フリースクールなどをめぐって、さまざまに政治情勢が動いているが、「教育」という枠組みからだけではなく、考えておく必要があるだろうと思う。3年前に、社会学者の貴戸理恵さんと対談した冊子のPDFを無償で配布しているが、制度問題についても触れているので、よかったら、参考までにご一読いただきたい。(山下耕平)

下記は、その一部(山下の発言部分)。

……………………………………………………………………………………………………

●グレーゾーンの問題

私は、学校にしても、労働環境にしても、やっていけないという人たちを問題にするより、やっていけない学校や労働環境を問い直さなければいけないと思ってます。

しかし、現在の状況を前提とした場合(いま現在、その状況を生きているわけですから)、不登校やひきこもりというのは、グレーゾーンの問題と言ってよいのではないかと思います。ハッキリと病気や障害とは言えない、理由もハッキリしない、しかし、やっていけない。それゆえに、親にとっても、教師にとっても、医者にとっても、やっかいな問題で、だからこそ、問い直しの契機にもなっていた。簡単に腑分けできないわけですね。

やっていけない人を、障害や病気としたほうが、メインストリームを走る人には了解が得られやすい。あるいは当事者にとっても、そういうラベリングを引き受ければ、障害年金がもらえるとか、免罪されるというか、そういう面がある。

居場所の位置づけを考えた場合も、ラベリングを引き受けて、福祉の枠組であれば、制度に乗せることができる。逆に、稼働能力があるんだと証明しようとすると、教育制度、学校として認めてほしいということになる(図5)。

そもそも、稼働能力の有無で人を選別すること自体がまちがっていると思うんですが、グレーゾーンの問題を誰が支えてきたのかといえば、家族ですよね。それを家族だけで抱え込むのではなく、共助として広げたものとして、居場所が生み出されきた。そういう共助の領域がある程度あれば、制度に頼らなくてもやっていけるとも言えます。しかし、フリースクールなども、厳しい経済状況のなか、自律的な運営が難しくなってきている。そうなってくると、制度に乗せてなんとか運営を維持したいとなる。そこで、福祉か教育かということになってくるわけですが、私は、制度にのらないで支え合う領域がないと、苦しいのではないかと思ってるんですね。だから、なんとか踏んばろうとしている。


●NPOが行政・市場の下請け化

次に、行政・市場・NPOの3つのセクターの関係を考えてみると(図6)、新自由主義のなかで行政が外部委託を増やし、一方でNPOの自律的な運営が厳しくなっているなかで、市場ばかりが広がっているように思います。たとえば冒頭でもお話ししたように、構造改革特区でできた学校63校のうち、NPO法人で設立されているところはゼロです。オルタナティブスクールと言えそうな学校は、私の知るかぎり3校のみで(いずれも学校法人として設立。そのうち1校は経営難で2011年度で閉校)、株式会社立の学校など、市場ばかりが拡大しているわけです。あるいは行政とNPOとの連携といっても、ひきこもり支援が就労支援となったように、NPO活動が行政の下請け化しているんですね。しかも、安上がりな下請け。さらには、NPOが市場の下請け化している面がある。これも冒頭にお話したように、近年、サポート校化するフリースクールが増えてきています(フォロにも通信制高校が営業に来られましたが、お断りしました)。制度が柔軟化したことで、市場的なものは広がっていても、NPOはかえって弱体化しているように思います。

アソシエーション的なもの、共助的なものが弱体化している。一方で家族も解体してきているなかで、グレーゾーンの問題を誰が支えるのか。支え手を失って、問題が宙づりになっていて、孤立化したり、シビアな状況が生み出されているのではないか。私は、そういう危機認識を持っています。

多様な教育機会確保法案の一方で

昨日、フリースクール議員連盟などが「多様な教育機会確保法案(仮称)」の試案を発表した。議員連盟は今国会中の成立を目指し、来年度に学校教育法を改正、2017年度から新法を施行したいとしている。
まだ、試案の段階ではあるが、想定される懸念はいろいろにある。すでに指摘してきた問題も多くあるが、さしあたって、今回は、あまり表にはでいないものの、気になる動きについて、書いておきたい。

今回の法案は、フリースクールの議員連盟と、夜間中学校の議員連盟の合同で提案されたものだ。昨日の議員連盟の参加者も、国会議員や文科省関係者のほか、フリースクール全国ネットワークと全国夜間中学校研究会の関係者が参加した。報道においても、おもにフリースクールが支援対象として取り上げられている。

こうしたなか、6月10日、新しい学校の会が「教育制度の多様性」をテーマにシンポジウムを開催する。新しい学校の会は、旧称を「学校設置会社連盟」と言い、株式会社立の広域通信制高校が中心となってつくられた会である。

株式会社立の学校は、2004年の構造改革特区以降、急速に広がり、これまでに広域通信制高校が21校、設立されている。構造改革特区では、NPO法人による学校設立も可能とされたが、私の知るかぎり、これまで1校も設立された例はない(もし、あったら教えていただきたい)。

広域通信制高校は、スクーリング施設などとして、サポート校やサテライト施設を全国各地に急拡大してきた。NPOのフリースクールなどにも積極的に営業にまわっており、多くのフリースクールがサポート校などを併設するようになった。

一方で、一部の広域通信制高校では、教員ひとりに対する生徒数が多すぎる、レポート添削がマークシートのみ、事務体制の不備、管轄自治体が実態を把握していないことの問題などが、文科省の調査によって指摘されている。

教育の領域を規制緩和した結果、株式会社がこぞって参入し、さまざまな問題が生じている。しかし、その問題はきちんと整理されないまま、現在に至っている。

今回の法案も、表に立っているのは、NPOのフリースクールや夜間中学校だ。しかし、株式会社の教育関係者も、この動きを熱く注視している。教育領域の市場化が何をもたらすのか、少なくとも先例はあるのだから、きちんとした検証は必要だろう。また、法案が成立すれば、確実に株式会社なども参入してくると思われるのに、いまのところ、表だって議論の場に出ていないことは、逆に、たいへん気がかりだ。(山下耕平)

文科省アンケートの自由記述欄

文科省フリースクール等担当から送られてきたアンケートの自由記述欄に、フォロでは下記のような回答を送った。ご参考まで。

…………………………………………………………………………………………………………

フリースクールといっても、実態はさまざまであるが、当法人では、まずは子どもの居場所であることを第一として、「いるだけで、いい」をキャッチフレーズに掲げている。子どもが学校に行かないというとき、子どもにとって、一番の問題になるのは居場所をなくしてしまうことであり、「いるだけで、いい」場が保障されることで、そこが足場になって、さまざまな学びに向かうこともできる。ただ、その意義は長期的な視野に立たないと理解されにくいものでもある。受益者負担の運営形態のなかでは、どうしても保護者の意識は目先の「効果」を求めがちで、そのことが結果として、運営の厳しさを招いてもいる。近年は、受益者負担から、より社会的に広く支えていただくなかで運営しようと、寄付を広く募り、会費を下げながら運営しているが、財政状況は厳しく、スタッフに負担をしわ寄せしている面は否めない。とくに、財政状況が厳しくなるなかで、全員がパートタイムとなって、兼業しながら関わる体制になってきており、スタッフが安定して関われる体制づくりは課題となっている。

また、フリースクールに来る子どもだけではなく、不登校などに関わる相談事業も実施している。持ち込まれる相談ケースは年々増え続けており、しかも不登校以前に家庭の生活における問題(保護者の精神疾患、経済的問題)など、さまざまな相談が寄せられるようになっている。このため、カンファレンス体制を持ち、スタッフが問題を抱え込まないようにしているほか、助成金などを得て、スクールソーシャルワークの考え方に学びながら、関係機関との連携をはかりつつ、自分たちの団体だけで抱え込むのではなく、社会資源のひとつとして、ネットワークを組みながら、子どもや家庭を支えていく取り組みを始めている。

こうした取り組みの公共性を広めていこうと、昨年度からは一団体の取り組みとしてではなく、大阪市内はじめ近隣のフリースクールとも共有をはかり始めている。

これらの取り組みは、「教育」というよりは「福祉」にあたるものかもしれないが、いずれにしても、塾のように、個人の利益のために受益者が私費で負担するものではなく、公共性を持ち、広く社会的に支えていくべき活動である。今回の文科省における検討においても、こうした活動の意義を汲んでいただきたい。

下村博文氏献金問題、特区、フリースクール支援……

下村博文文科大臣の献金疑惑が問題になっている。2004年に、構造改革特区で公設民営学校が導入された際にも、背景に塾業界からの献金があったとの指摘もある(3月10日衆院予算委で宮本岳志議員/しんぶん赤旗2015年3月11日)。事実であれば、利益誘導政治と批判されてしかるべきだろう。

いま、「フリースクール支援」の動きが起きているが、この動きも、下村大臣が主導してきたものだ。フリースクールには「献金」できるような団体はひとつもないだろうが、関係者は、この問題について、きちんと考えておくべきだと私は思う。

さしあたって、ちょっと長くなるが、参考までに拙著『迷子の時代を生き抜くために』(2009北大路書房)から引用しておきたい。だいぶ前に書いたものだが、読み返してみて、いまでもまったく同じ問題があると言えるように思う。(山下耕平)

………………………………………………………………………………………………………………

 たとえば構造改革特区は、大きな枠組みとしては、市場原理の活性化のために規制緩和するということだ。教育分野にしても、学校という「聖域」に市場原理を導入することが第一の目的とみていいだろう。これまで学校の設立は学校法人にかぎられていたが、株式会社やNPO法人でも設立可能になった。しかし、株式会社による学校設立が大学・大学院8校、小・中・高校19校あるのに対し(2008年現在)、NPO法人による学校設立は1校もない。先にあげたシュタイナー学園や東京シューレ葛飾中学校の場合は、学校法人として学校を設立している。これも大幅な規制緩和があってのことだが、それでも、既存のフリースクールやオルタナティブスクールで学校を設立できるところは、ほとんどないと言っていいだろう。

 数が少ないとはいえ、シュタイナー学園や東京シューレ葛飾中学校のようなオルタナティブスクールやフリースクールが制度的な位置づけを得たことについて、一定の評価はできるだろう。しかし、たいへんイヤな言い方をすれば、これらは、株式会社を参入させるための“当て馬”にされたという懸念もある。それはうがった見方にすぎるとしても、大きな流れとしては、特区が市場原理のための規制緩和だということは事実だ。


●不登校するのは才能のある子?

 2005年、文科省の下村博文政務官(当時)は、フリースクールなどとの懇談会を数回にわたって開催するが、下村政務官は不登校について、次のように語っている。
  今の公教育は画一・均一教育です。近代工業化社会、高度経済成長までの義務教育はそういうものでよかったと思います。しかし、これからの時代は脱近代工業化社会です。それぞれの個性、人間的な魅力が社会にどう貢献できるかが問われている。それに対して、今の学校教育システムは対応できていません。ですから、学校教育以外の部分で、子どもたちをフォローアップできるところがあれば、学校として認めていくべきだと思います。(『Fonte』181号/2005年11月1日)
 これは、オルタナティブ教育関係者のあいだでも語られてきた言説だ。ある意味では的を得た指摘だと言えるだろう。しかし、私は、この考え方には違和感を覚える。たしかに、そうした面はあるとしても、それでは、結局、人の商品化を深めるばかりで、不登校というかたちで子どもが告発してきたこととは、決定的にズレてしまうように思うのだ。

 学びの多様性というとき、それが商品の多様性と同じものになってしまうならば、それは教育産業でしかない。スーパーで売られているものが多様なのに生命の多様性を感じさせないように、フリースクールやホームスクーリングの学びが、商品としての多様性のひとつになるならば、それは、どの商品がいいかを選ぶのと同じ選択でしかなくなってしまう。

 再度、下村氏の発言を引こう。
  ――下村さんは「国家戦略としての義務教育の在り方」とおっしゃっていますが?
   21世紀に国が国民に対して果たす役割というのは、教育立国として、国民が意欲を持って学習できる最大限のチャンス、環境を国が与えるということだと思います。一人ひとりの意欲、能力をバックアップする。個々人が魅力的な人間として能力を高めていけば、それだけ社会で働くチャンスが広がります。それが結果的に国を豊かにすることになる。教育における財政的な措置をふくめ、学びたい人が学べる環境を国がつくっていくことが国家戦略です。
   エジソンも、きっと今の時代では不登校になるような子どもだった。不登校児というのは、能力のない子どもじゃなくて、きらめくような才能や能力があっても、これまでの学校制度では適応できない子どもたちで、そういう子はたくさんいると思います。そんな子どもたちが通えるような、さまざまなタイプの学校があればいいと思うし、既存の学校も含めた自由な選択が必要だと思います。(前掲紙)

 不登校というのは、理由のよくわからない混沌としたものだった。どんなに行政が数を減らそうとしても増えるばかりで、もっともやっかいな領域としてあったのだと思う。構造改革特区などの動きは、その混沌としたものを腑分けし、そこから商品価値のあるものだけを掬い出そうとしているとは言えないだろうか。学校に行こうが行くまいが、この資本主義社会でやっていけるかどうかは個人の能力次第で、その能力を磨くのは、従来のような学校でなくともかまわない。しかし、能力を売ることのできない人間は、医療の対象とさえなる(たとえば発達障害)。不登校が人を商品として見る視線からの撤退だとしたら、そこにも人を能力で選別する視線が及ぶことは、子どもたちの圧迫感を深めることになるだろう。

フリースクール支援、教育バウチャーについて

フリースクール支援政策について、具体的な動きが出てきている。
ひとつは今年に入って、文科省が「フリースクール等に関する検討会議」を開始したこと。1月30日に第1回の会議が開かれ、第2回は2月27日に開かれる。

もう一つには、超党派の国会議員による「フリースクール等議員連盟」の総会(2月28日)において、馳浩幹事長から「普通教育支援法(仮称)」の議員立法化を検討していることが明らかにされたこと。

いずれも、具体的な支援方法としては、教育バウチャー制度を視野に入れているとの見解が示されている。また、国会においても、2月18日、柴田巧参議院議員(維新の党)が「低所得者層への教育支援策として、学校教育に使用目的を限定した『クーポン』を子どもや保護者に支給する『教育バウチャー制度』の導入を本格検討すべきだ」と質問したのに対し、安倍首相は「教育分野におけるバウチャー制度は、子どもや保護者の選択肢の拡大、低所得世帯の学習機会の充実といった観点から傾聴に値する意見だ」と述べている。

低所得層が利用できるバウチャーとしては、大阪市が2013年12月から「塾代助成事業」を開始している。これは月額1万円までのクーポンを発行し、塾やスポーツ・文化施設などで使えるというものだ。利用できるのは就学援助の認定を受けているか生活保護の受給世帯で、2014年8月現在で登録者数は8,026人(想定人数の40%)、登録事業者は1227教室となっている(このうち学習塾が1066教室)。塾代助成事業の名前の通り、基本的には塾代を補填する制度となっている。しかし、学校外の教育バウチャーという意味では、先行事例となっていると言えるだろう。

ここで、フリースクール支援策と教育バウチャー制度について、いくつか考えておくべきと思うポイントを、とりいそぎ記しておきたい。
・施設への助成ではないという点で、支援対象(フリースクールなど)への線引きがゆるやかに済む可能性がある(クーポン対象としての線引きはあるだろう)。

・そのぶん、塾などとの区分はつかず、教育産業が「フリースクール」に参入してくる可能性は高い。

・結果、NPOなどで活動しているフリースクールへの助成よりも、義務教育の市場への委託となる可能性がある。

・教育費の使途について、主権が家庭にゆだねられるというのは、「選択の自由」を担保するものである。それは学校のパターナリズムに対する当事者主権という面もある。

・しかし、その主権は保護者にあって、子ども本人ではない。

・保護者のニーズと子どものニーズは、一致しないことも多い。

・保護者の側ではなく、子どもの側にどれだけ立てるのかが、フリースクールなどに問われてきたことだろう。

・フリースクールが、塾などと並んで保護者に選択されるものとなったとき、フリースクールは市場に淘汰されるものとなる可能性がある。


ほかにも、いろいろ考えるべき問題はあるように思うので、ご指摘いただきたい。(山下耕平)

文科省「全国フリースクール等フォーラム」

昨日、文科省主催の「全国フリースクール等フォーラム」に参加してきた。近日中に、文科省のyoutubeチャンネルで動画が公開されるとのことなので、くわしいことは閲覧していただくとして、まずは簡単に報告しておきたい。
 
冒頭、下村文科大臣があいさつし、下記のようなことを述べた。


・フリースクール支援は安倍政権の教育施策の重要事項。
・日本は国際比較しても、子どもの自己肯定感が低く、「自分はダメだと思う」割合が84%もある。それは学校が子どもをひとつの物差しで測ってきたからではないか。
・発達障がいや不登校、貧困などのハンディキャップがあっても、教育によって乗り越えられることが重要。
・大学入試改革を含め、これまでの暗記型の教育制度を改め、これまでの学校では測れなかった多様な能力を伸ばす教育制度が必要である。
・不登校の子どものなかには、アインシュタインやエジソンのような逸材が眠っているかもしれず、そうした“ダイヤモンドの原石”を磨く機会をつくり出していく。
・具体的には、フリースクールへの財政支援の検討と、制度的な位置づけの検討をする。
・来年5月ごろに中間報告をまとめる予定。
 
その後、トイボックス(大阪)、クレインハーバー(長崎)、教育支援協会(神奈川)の3団体から事例発表があったが、いずれも公設民営や行政との連携の事例として取り組みが発表されていた。

講演として、永井順國氏が日本の公教育制度の変遷をたどりながら、市民との協働の可能性について語り、永田佳之氏が、国際比較のなかで、日本のフリースクールなどの取り組みを位置づけ、ユネスコの提唱しているESD(未来志向の教育)とも合致すること、1割ほどの「健全なマイノリティ」が存在することが、社会全体にとって意義あることなどを語った。

意見交換の時間は10分もなく、発言機会が限られていたが、私は短いながら意見を述べさせていただくことができた。そこで述べたのは、下記のようなことだ。

・子どもの自己否定感が強まっているのは、自分の存在が教育的な評価の視線でのみ、まなざされるようになったからではないか。
・不登校というのは、そのまなざしからの撤退であり、フリースクールなどの役割は、その撤退を保障するという面がある。それが「居場所」と呼ばれてきた。私たちのフリースクールは「いるだけで、いい。」をキャッチフレーズにしている
・しかし、その意義は理解されにくく、親もお金を支払う価値を見いだしにくい。そのため、フリースクールが財政的に苦境に立っているとも言える。
・フリースクールを行政が支援するというとき、多様な能力を伸ばすといっても、成果主義になると、支援は塾産業などに傾き、かえって居場所を運営してきたフリースクールが苦しくなることを懸念している。

発言時間が限られていたので、言えることに限りはあったが、最低限のことは伝えることはできたと思う。そのほか懸念や疑問や時間不足だったことなど言いたいことは多々あるが、文科省主催でフリースクールをテーマにフォーラムを開いたこと、大臣が最後まで出席したこと、終了後も、亀田徹フリースクール担当官が、個別に話を聴く時間をとっていたことなど、誠実な姿勢はうかがえた。今後、どのように検討がなされていくのかわからないが、間口が開かれたことは確かなので、どういう方向に進むにせよ、きちんと意見を言っていきたい。(山下耕平)

安倍首相のフリースクール視察-2

9月10日、安倍首相がフリースクール東京シューレを視察した。視察のようすは首相官邸ホームページにアップされているほか、各社報道などは、「まとめサイト」にまとめてみた。
◎首相の発言要旨は下記。

・生き方、学び方はさまざまでいろんな道があるんだということを多くの人に知ってもらうことが大切。
・子供たちが、いじめなどにより学校に行けなくなっているという状況から目を背けてはならない。
・不登校になっている子どもたちにとって、東京シューレのような場、さまざまな学びの場があること、そこでの経験を活かしながら、将来に夢を持ってがんばっている子どもたちがいるということを伝えていきたい。
・さまざまな生き方、学び方があるということを受けとめながら対応をしていくことが大切。
教育再生実行会議の報告書を受けて、学習面・経済面において、どういう支援ができるかの検討を文部科学大臣に指示する。
首相が不登校やフリースクールについて、このような発言をしたということは、政治的には大きな意味を持つだろう。ただ、首相の視察自体は、言うまでもなく政治パフォーマンスで、安倍首相自身が不登校やフリースクールを理解しているかどうかなどは、ほとんど関係ない。焦点となるのは、文部科学省が来年度に行なうフリースクールへの委託研究や有識者会議の設置などだろう(→概算要求資料)。しかし、政治パフォーマンスとしては最大級なので、良くも悪くも、大きなインパクトを持ったことはたしかだ。

懸念することについては、すでに書いた(2014.09.09)ので繰り返さないが、政治情勢に翻弄されるのではなく、無視するのでもなく、この機会に、関係する人たちが自分たちの見解をきちんと述べていくことが必要だと思う。それには、当事者の意見を集約するのではなく、多様な意見を多様なままに伝えていくことが必要だろう。それこそ「多様性」をうたっているのだから。
(山下耕平)

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「なにものか」でなくともよい場所、なるにわ(NPO法人フォロが開いてます)。毎週土曜日の午後にサロンを開いているほか、づら研(生きづらさからの当事者研究会/月に1回)、終末ティータイム、冊子『もじにわ』刊行、なるにわラジオ配信などの活動をしています。ブログは、おもにコーディネーターの山下耕平が書いています。

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