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なるにわ ぶろぐ

「なにものか」でなくともよい場所、なるにわのブログです。
なるにわの活動、づら研などについて
おもに、コーディネーターの山下耕平が書いてます。

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オトナの階段、おりる~私の共育学舎滞在記~

今年も、共育学舎を訪問してきました。共育学舎というのは、廃校を借りて、自給自足の生活を営みながら、無償で食事や宿泊を提供し、いろんな若者が滞在している“止まり木”のような場所です。ブログに報告を書こうと思っていたら、参加メンバーから文章が届いたので、こちらを載せます。(山下)
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●役立たずな私

私は8月24日から3泊4日、ひきこもり仲間とともに共育学舎でお世話になりました。
最初の3日間はあいにくの雨。これ幸いと共育学舎を出た若者たちが始めている「なんか面白そうなところ」へ総勢6名でわらわらと押しかけ、お喋りを楽しみました(山の学校、ギークハウス、ユースライブラリーえんがわ、など)。
突然やってきた、わけの分からないひきこもり集団に、みなさまそれはあたたかく接してくれました。お茶やお茶菓子まで出していただいたりなんかして、それぞれがやりたいことを語る目は、ギラギラとではなく、静かに輝き、まるで澄み渡る夜空のよう。
自主性のない、とことん受け身な真性ひきこもりの私にはそれさえまぶしくて「なんかすみません……」と心のすみでひとりつぶやいてみたりして。
恵みの雨のおかげで、たくさんのうつくしい人々と知り合えたのは僥倖ですが、気づいてみれば3日3晩のタダ飯食らい。恥知らずの私でも、さすがに共育学舎のみなさまに申し訳なくなってきました。
そうして迎えた滞在最終日、スイッチが切り替わったかのように晴れ渡る熊野川西屋敷。これまた具合のいいことに農家は稲刈りの季節。人手は溢れるくらいで丁度いいはずです。ひきこもりも束になってかかれば(引率者やフリースクールスタッフもいましたが)立派とまでは言えなくとも、普通の人手くらいにはなれるはず。恩返しというのもおこがましいささやかなお手伝いに、密かに意気込む私。
しかし、事件はおこりました。
稲刈りの主な作業は、稲を刈る人、刈った稲を運ぶ人、稲を適量に束ねる人、束ねた稲を干す人の四つのチームに分かれます。最初は稲を刈る人に振り分けられた私。刈るときの注意事項を真剣に聞いていたにもかかわらず、開始3分も満たずに「その刈り方はちょっと……」と経験者からさっそく指導が入ります。さらに丁寧に教えてもらうも、私に刃物を持たせてはいけないことを、もちろんあちらは知りません。
「私が刈ると危ないみたいですね」とそそくさと刈るチームから退散する私。見事にやる気が空回っています。これはまずいとあせりはじめました。
あせりで挙動不審になりながらも、結局稲を束ねるチームに加わる私。ここなら座って作業ができるし、刃物を持たなくてもいいし、でこぼこのあぜ道を稲でいっぱいの手押し車を押す必要もありません。とにかく一番簡単そう。これまでの人生で己の役立たずっぷりを散々突きつけられてきた私でも、きっとこれなら役に立てるはず。
しかし私は甘かった。コツをつかめば簡単そうなこの作業、コツをつかむということが何よりも苦手な私に最初からうまくできるはずがありません。一緒にはじめた仲間が早々にコツをつかむ隣で、オタオタもろもろ、稲をぼろぼろと落とす私。他にもさまざまなつながりで集まった、農作業初体験のみなさまも、どんどん束を量産していきます。
こうなるともう悲惨です。自意識過剰でエエかっこしいの私には、まわりができていて自分ができない、という状況ほど弱いものはありません。フラッシュバックする学校の先生の、1週間でやめたバイト先のおばちゃんの罵倒の数々。スタミナがない、器用さがない、力がない、ないないづくしの私にできることなどこの世にあるのかと、暗澹たる気分に陥ります。この役立たず。食うだけ食って、寝るだけ寝て、農作業では一人前に場所だけ取って。お前はここでも寄生虫のなのか。いっそ消えてしまえ。いえ、もう消えたいです、正直……。
内なる私があらゆる語彙を集めて私を罵倒しはじめます。やだ、涙が出そう。



●勝山おじさんが脳内にばーんと登場

そんな稲よりも細い、ぽっきりと折れそうな私の心を支えてくれたのが、勝山おじさんの存在でした。
知らない方のために、ここでちょっと解説を。
勝山おじさんとは、ひきこもり歴20年にして、ずばり“ひきこもり名人”を名乗るおじさんです(ブログ「鳴かず飛ばず働かず」)。
自家中毒による脳内パニック、今にも泣きそうな私の頭をよぎったのは、他の誰でもない、勝山おじさんの存在、おじさんの言葉たちでした。

ちょっと待て、落ち着くんだ、私。思い出せ、勝山おじさんという41歳のおっさんのことを。安心ひきこもりライフで、ブログでさらされた、数々のダメダメなおじさんの姿を。勝山おじさんはあの時、あんなにも役立たずだった。あんなにも社会性がなかった。あんなにもダメダメだった。それでもおじさんは、安易な自己憐憫や自家中毒に陥ることなく、今日も「ばーん。」とか言いながら生きている。

ここで泣いて、役立たずな自分をかわいそうがってどうする。周りにいいこいいこしてもらうのを待つのか? 相変わらず束ねるべき稲をぼたぼたと落としながら、私はひたすら念仏のように勝山おじさんの存在を、その言葉を頭の中で唱え続けました。そうしておじさん念仏を唱えながら作業を続けること1時間半。まわりのみなさまが15分で飲み込んだコツに、ようやく私は触れることができました。他の誰でもない、私が考えた、私にとってやりやすい稲の束ね方を、私はついに発見したのです。そうして最終的には、はじめは8分の1人前くらいだったのが、3分の1人前くらいにまでランクアップできました。3分の1人前、ひきこもりには当たり前。私はひとり勝手にご満悦です。

すべての作業が終わって気がついたのは、稲の束ね方だけではありませんでした。言われた通りにのみやろうとするから難しいのです。誰かのやり方を完璧に真似ることではなく、自分にとってどうすればやりやすいのかを考えれば、話は簡単だったのです。

これは何も作業だけの話ではない。人生だって、生きることだって同じじゃないか。
「〇〇だからこうあるべき」「このくらいできて当たり前」。そういった社会的、世間的な規範意識の階段からおりることこそが、私という人間を生き延びるための階段を一歩のぼることでした。

カッコつけていうのなら、オトナの階段をおりること。(もともと一歩ものぼっていませんでしたが……)
そのことに気がついたのは、勝山おじさん、あなたがこんなにもダメダメかつ素敵なおじさんだったおかげです。おじさん、どうもありがとう。
あなたは私の恩人です。


●ありがとうございました。

最後になってしまいましたが、今回の旅行で出会った人たちに、私は伝えきれないくらいの感謝の気持ちでいっぱいです。
まずは三枝さんをはじめとする、共育学舎のみなさま。
こんな私を静かな佇まいで、当たり前のように受けいれてくれてくださって、本当にありがとうございました。共育学舎がなくては、ここに書いたすべてのことは起こりませんでした。
ご飯、とってもおいしかったです。

夜はカエルや秋の虫たちの鳴き声を子守唄に、ぐっすりと眠ることができました。ふだんは夜が来るたび、今日もちゃんと眠れるだろうかと毎日不安な私が、あんなに気持ちよく眠れたなんて、まるで奇跡みたいです。

突然押しかけた訪問先で、あたたかく私たちを迎えてくれたみなさま。
あなたたちの笑顔は、言葉は、生きているその姿は、ただそれだけで本当にうつくしく、静かな輝きに胸を打たれました。

一緒に農作業をして、一緒にお昼ごはんを食べた、それぞれのつながりをもとに集まった、名前も知らないみなさま。
私にとってとても大きな気づきの瞬間に、同じ作業を、同じ時間を共有できたこと。その瞬間に、私がひとりではなかったこと。
あなた方の営みの隣で、私はオトナの階段をおりました。そこにいてくださったこと、感謝しています。

すべてのみなさまのおかげで、たくさんのありがとうに出会うことのできた4日間でした。
たくさんのありがとうを、ありがとうございました。

野草

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「なにものか」でなくともよい場所、なるにわ(NPO法人フォロが開いてます)。毎週土曜日の午後にサロンを開いているほか、づら研(生きづらさからの当事者研究会/月に1回)、終末ティータイム、冊子『もじにわ』刊行、なるにわラジオ配信などの活動をしています。ブログは、おもにコーディネーターの山下耕平が書いています。

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